中小企業で人事戦略を考えるなら、組織課題から見直した方がいい理由|中小企業の人事体制

中小企業の人事戦略を考えるとき、組織課題から見直した方がいい理由

〜大企業のフレームワークをそのまま使っても合わない、中小企業なりの考え方〜


「人事戦略を立てたい」と思っても、大企業向けのフレームワークをそのまま使っても合わない——中小企業の経営者・人事担当者なら、この壁にぶつかった経験があるのではないでしょうか。

中小企業で人事戦略を考えるなら、理想の組織像から積み上げるよりも、今目の前にある組織課題から考えた方が現実的です。リソースが限られる分、何に集中するかを決めることが、戦略を考えるうえで最初の一歩です。

人事戦略という言葉が大きく感じても、まずは「今どこで引っかかっているのか」を見ていく方が、中小企業では考えやすいことがあります。

※個別の事情によって判断は異なるため、「現場で整理するための考え方」としてご覧ください。なお、最適な方向は企業規模・業種・組織の状況によって異なります。


中小企業で人事戦略を考えるとき、今の課題から見た方が考えやすい理由


  • リソースの制約が、選択と集中を必要とする
  • 人事戦略は事業の流れと合っていないと意味がない
  • 課題が見えていないと施策が空回りする

大企業向けの人事戦略モデルが中小企業に合いにくい理由を先に押さえておくことが、正しいアプローチへの近道です。「大企業がやっているから正しい」ではなく、自社の状況に合った考え方を選ぶことです。

● リソースの制約が、選択と集中を必要とする

  • 中小企業では人事に割けるリソースが限られています
  • 複数の人事領域を同時並行で高度に整備することは現実的ではありません
  • 「今最も影響している課題」に集中することが、限られたリソースで成果を出す考え方の基本です

「やるべきことはわかっているが、人手も時間もない」という状況が中小企業の人事の現実です。だからこそ、全部を同時に動かそうとするより、今期は何に集中するかを決める方が、結果につながりやすくなります。何もかもを並行して進めようとすると、どれも中途半端なまま時間が過ぎます。動かす順番を決めることが、中小企業の人事戦略で最初に取り組むべきことです。「何をやるか」より「何をやらないか」を決める方が、実際には難しく、かつ重要です。

● 人事戦略は事業の流れと合っていないと意味がない

  • 方針だけを先に決めても、事業の流れと合っていなければ空回りしやすくなります。
  • 事業計画と人員の動きがつながっていないと、後手に回ることが積み重なります
  • 人事戦略は、経営の意思決定を支えるための戦略です

事業の先を見ながら人事の動きを組み立てていくことが、人事戦略が事業に貢献するうえで欠かせない考え方です。「人事は事業計画と別に動いている」という会社では、後手に回りやすくなります。事業の先と人員の見通しを同時に考える習慣が、ここでは大切です。経営と人事が別々に動いている状態が続くと、ずれはどんどん広がります。

● 課題が見えていないと施策が空回りする

  • 「やったが変わらなかった」「動かしたが変わらなかった」——こうした結果になるのは、表面的な症状に対処していたからです
  • よく見える問題が、実は別のところに原因があることもあります
  • 施策がうまくいかない理由が、思ってもみないところにある場合もあります

「何かやっているのに変わらない」という状況は、課題の見立てがずれていることがあります。表面に出てくる問題に対処するだけでは、根っこが変わらないまま同じ問題が繰り返されます。施策を考える前に、「何が本当に起きているのか」を一度立ち止まって確認することが、空回りを防ぐうえで欠かせません。表に見えていることだけ追いかけていると、同じことを繰り返しやすくなります。「なぜこの問題が起きているのか」を一段深く考えてみることが、施策を変える前にやるべきことです。


人事戦略を考えるとき、最初に見ておきたいこと


  • まず現状の課題を各領域で把握する
  • 課題の優先順位を決めて絞る
  • 動かしながら修正していく

人事戦略の立て方は、大きくこの3つの流れで考えると見通しがつきやすくなります。フレームワークを使うより、この順番で考える習慣をつける方が、中小企業には現実的です。

● まず現状の課題を各領域で把握する

  • まず、どこで引っかかっているのかをざっくり見ていきます。
  • 「何がうまくいっていないか」「どんな問題が出ているか」を経営・管理職・人事のそれぞれの視点で共有します
  • 「問題がない」という前提で進めると、見えていない課題を見落とすことになります

ここで大切なのは、「今起きていることを正確に把握する」という姿勢です。「うちは特に問題ない」と思っているうちに、水面下で課題が積み重なっているケースは少なくありません。経営・現場・人事で、見えているものが違うことは珍しくありません。どこか一つの視点だけで判断すると、あとから見落としに気づくことがあります。この棚卸しは、一度やれば終わりではなく、定期的に行うことで組織の変化を早めに捉えられます。

● 課題の優先順位を決めて絞る

  • 洗い出した課題をすべて同時に解決しようとすると、どれも中途半端になります
  • 「今最も影響が大きい課題」に絞って動くことが、成果を出しやすくします
  • 優先順位の判断は、経営として行うことが重要です

「全部いっぺんに解決したい」という気持ちはわかりますが、それが空回りを生む原因になります。今期何に集中するかを経営として決め、それ以外は後回しにする判断が、動き続けるためのコツです。「どれから手をつけるか」を決めるところで止まりやすい会社は少なくありません。「どれも重要」で動かないより、一つ決めて動いてみる方が組織には変化が生まれます。小さくでも動いた実績が積み重なることで、次の一手が見えやすくなります。

● 動かしながら修正していく

  • 計画通りにやり切ることより、成果が出る形に修正し続けることの方が、ずっと価値があります
  • 動かし始めたら定期的に進捗を確認し、現場の声も拾いながら調整します
  • 進み具合を見ながら、やり方を変えていく柔軟さが、定着につながります

人事の施策は、動かしてみてはじめてわかることが多くあります。計画段階では想定できなかったことが現場で起き、修正が必要になることは珍しくありません。「計画通りにやり切ること」が目的にならないよう、定期的に振り返りながら進めることが、施策を実態に合わせ続けるコツです。経営・管理職が進捗に関与することで、修正の判断がしやすくなります。「うまくいっていないかもしれない」と感じたときに、素直に立ち止まれる文化があるかどうかも、改善が続くかどうかに影響します。計画に縛られすぎず、現場の実情に合わせていく姿勢を続けることです。


人事戦略を動かすための組織の見直しポイント


  • 経営が人事の意思決定に関与する
  • 管理職が現場の実行者になる
  • 人事が設計・確認・改善を担う

戦略があっても、誰がどこを動かすかが決まっていなければ始まりません。担う人が決まっていない戦略は、誰も動かしません。

● 経営が人事の意思決定に関与する

  • 中小企業では、人事にかかわる重要な判断は経営者が担います
  • 人事にかかわる重要な判断は、人事担当者だけでは下しにくいものです
  • 人事担当者だけで完結しようとすると、判断できる範囲の壁にぶつかります

「人事に任せている」という状態では、動けない場面が出てきます。人事の方針が経営の意思と一致していないと、後から修正が必要になります。人事担当者が提案できる環境と、経営が判断を下す場を作ることが、人事戦略を動かすうえで必要な環境です。経営が「他人事ではない」という姿勢を持つことが、動きを生みます。

● 管理職が現場の実行者になる

  • 現場で動く人事施策の多くは管理職が担います
  • 管理職がマネジメントの考え方を理解していないと、人事戦略は現場に降りてきません
  • 人事と管理職が連携できているかどうかが、施策が定着するかどうかを左右します

管理職が「自分は関係ない」と思っている状態では、人事戦略は机上のものにとどまります。管理職が自分の動きを理解して行動できる状態をつくることが、人事として取り組むべき課題の一つです。管理職のマネジメント力が現場の人事の質を決めます。ここが整っていないと、どんな施策も現場には届きません。管理職が人事の動きを「自分ごと」として受け取れているかどうかを、人事として定期的に確認しておくことが助けになります。管理職へのフォローも、人事がやるべきことの一つです。

● 人事が設計・確認・改善を担う

  • 人事担当者は、施策を設計し、進捗を確認し、改善を提案します
  • 施策の効果を見ながら、次の動きを自分で考えられる状態をつくることが、人事の目指すべき姿です
  • 経営・管理職・人事がそれぞれ動くことで、戦略は初めて組織を動かします

人事担当者が「処理をこなすだけ」の状態では、戦略は誰も動かしません。施策がうまくいっているかどうかを見ながら、経営に状況を伝えることが人事には求められます。「何が起きているかを把握して動ける人事」が、組織の中で存在感を持ちます。そのためには、経営と人事の間で方針を共有する場があるかどうかが、戦略が動くかどうかに影響します。


まとめ


  • 中小企業の人事戦略は、組織課題から考える方が現実的です
  • 課題を把握し、優先順位を絞り、動かしながら修正していくことが基本の流れです
  • 経営・管理職・人事がそれぞれ動ける状態にあることが、戦略を動かすうえで欠かせません

「人事戦略らしいことができていない」と感じる会社ほど、まず今の課題を言葉にしてみることから始まります。戦略という言葉を使わなくても、「今期は何に集中するか」を経営として決め、実行に移すことが人事戦略の第一歩です。小さくても、動き始めることが積み重なって、組織は少しずつ変わっていきます。

「どこから手をつければいいかわからない」という段階でも問題ありません。今の状況を一度確認するだけで、次が見えてくることがあります。「完璧な戦略を立ててから動く」より、「今できることを動かしながら考える」方が、中小企業には合っています。

人事課題の本質を整理するには、こちらの記事も参考になります。

▶ 人事課題の構造を可視化する方法はこちら

中小企業の人事戦略について、一緒に考えます

人事戦略という言葉を使っていなくても、「今の体制でこのままでいいのか」と感じているなら、その違和感から整理してみるのも一つです。

▶ 詳細・お問い合わせはこちら(トナリの人事課長®)


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