「評価制度を直したい」と思ったとき、どこから手をつけるか
〜評価制度を変える前に、まず問題の場所を見ておく〜
評価が終わるたびに、何かすっきりしない感覚が残る。「評価者によって評価の厳しさがだいぶ違う」「評価面談が毎年似たような会話で終わっている」「制度はあるのに、社員が評価を信頼していない気がする」——こういった状況が続くと、「そろそろ評価制度を見直さなければ」という話が出てきます。
ただ、見直しを進めようとしたとき、最初に悩むのが「何から手をつければいいのか」という点です。制度の中身を変えるのか、評価者への研修を増やすのか、運用のルールを見直すのか——問題がどこにあるかを絞り込まないまま動き出すと、手を打っているはずなのに改善しないという状態が続きやすくなります。
この記事では、評価制度の見直しを考えるとき「どこに問題があるか」を見ていく視点をまとめています。
※個別の事情によって判断は異なるため、「現場で整理するための考え方」としてご覧ください。なお、最適な方向は企業規模・業種・組織の状況によって異なります。
評価制度がうまくいかないとき、まず確認したいこと
- 制度の問題と運用の問題を分けて考える
- 評価者が制度を使いこなせていない状態
- どこから見ていくか
評価制度への不満や課題感があるとき、問題の場所が「制度そのもの」にあるのか「制度の使われ方」にあるのかで、対応の方向はまったく変わります。両方が絡み合っていることも多いですが、どちらが主な原因かを見極めないまま動くと、対応が的外れになりがちです。
● 制度の問題と運用の問題を分けて考える
- 評価制度がうまく回らないとき、制度そのものに引っかかりがあるのか、使い方のところで止まっているのかで、見る場所は変わります
- 制度そのものに問題がある場合と、運用に問題がある場合では、見るべき場所がまったく違います
- 制度の問題は制度を見ればある程度見えますが、運用の問題は現場の状態を見なければわかりません
評価制度への不満が出ると「制度を変えよう」という話になりやすいのですが、実際には制度を変えなくても運用を見直すだけで改善することがよくあります。逆に、運用をいくら手入れしても制度の側に問題があれば限界があります。どちらに問題があるかを見極めることが、見直しに入る前にやることです。
「制度の問題か、運用の問題か」は、今の評価がどのように使われているかを見ることで少しずつ見えてきます。問題の場所が見えてはじめて、対応の順序が決まります。
● 評価者が制度を使いこなせていない状態
- 評価制度への不満の多くは、評価者によって制度の理解や使い方にばらつきがあることから生まれています
- 評価者によって評価への向き合い方がかなり違う場合、制度ではなく評価者側に問題がある可能性があります
- 制度を変えることよりも、評価者が制度を正しく理解して使える状態をつくる方が、先に取り組むべき場合は少なくありません
評価者が「どう評価すればいいかわからない」「評価面談が苦手」という状態のまま評価を続けていると、制度がいくら整っていても評価の質は安定しません。評価者として適切に動ける状態をつくることが、運用改善の入口になります。
ただ、評価者に問題があるといっても、評価者本人の責任というより「評価の仕方を教わったことがない」「何が正しいのかわからない」という環境の問題であることが多いです。評価者が安心して評価できる状態をつくること自体が、組織としての課題です。その視点がないと、評価者個人を責める方向に話が向かいがちで、問題の根が解消されません。
● どこから見ていくか
- 評価制度の見直しを考えるとき、まず「今の評価がどういう状態か」を見ておくことが大事です
- 社員・評価者・制度の連動、それぞれの状態を見ると、問題の場所がある程度絞り込まれます
- 現状を把握しないまま見直しを進めると、実際の問題ではない部分への対応が増え、改善が実感できないという状況が続きます
評価者と社員の両方が評価についてどう感じているかを知ることで、問題の場所が見えてくることが多いです。「制度がよくわからない」「評価の理由がわからない」という声が出るなら、制度の中身よりも先に共有の問題を見た方がいいです。
問題の場所によって対応が変わるので、「どこに問題があるか」を見てから動く順序が重要になります。見切り発車で動いたとき、後から問題の場所が変わって手戻りが起きるのは、評価制度の見直しではよくあることです。
よくある状態と、その背景
- 評価面談が形式的になっている
- 評価者ごとに結果のばらつきが出る
- 評価基準への不満が続く
評価制度に課題を感じる企業でよく見られる状態には、ある程度共通したパターンがあります。それぞれの背景を見ておくと、次に何をすべきかが見えやすくなります。
● 評価面談が形式的になっている
- 評価面談が毎年同じような流れで終わり、部下の成長や業務の改善につながっていないと感じる場合、面談自体が「こなすもの」になっているケースが多いです
- 面談が形式的になる背景には、「何を話せばよいかわからない」「部下の反応が怖い」という評価者側の困りごとがある場合があります
- 評価面談の目的を「評価を伝える場」ではなく「今後を一緒に確認する場」として捉え直すことで、面談の中身が変わることがあります
面談の質を上げるには、評価者が「何を準備して、何を話すか」という観点を持てるかどうかが大きく影響します。フィードバックの手順を細かく決めるよりも、まず評価者自身が面談の目的を腹落ちさせていることが大事です。
評価面談が形式的になっているとき、制度を変えることで解決しようとしても難しいことが多いです。面談の中身は、制度よりも評価者の姿勢と準備に左右されます。「面談のやり方」を変える前に、「面談で何を達成したいか」を評価者が理解しているかどうかを見ることが先です。面談の後に何かしら振り返る機会がある組織とない組織では、時間が経つほど差が出ます。
● 評価者ごとに結果のばらつきが出る
- 同じ評価基準を使っていても、評価者によって評価が厳しい・甘いという差が出ることはよくあります
- 評価基準の解釈が評価者によって異なっている、あるいは評価者が基準をあまり意識せず感覚で評価している場合に起きやすい状態です
- ばらつきが大きいと、社員の側に「評価は上司次第」という不信感が生まれやすくなります
評価のばらつきを完全になくすことは難しいですが、ある程度の一貫性を保つためには、評価者が同じ基準を同じように解釈している状態をつくることが必要です。基準の意味が全員に揃って伝わっているかどうかを見ることが、まずやることになります。
ばらつきの背景には、多くの場合「各自が自分なりに基準を解釈している」という状態があります。解釈が違えば、基準がいくら整っていても同じことが繰り返されます。基準が共有されているかどうかを見ることが、ばらつきへの向き合い方になります。
● 評価基準への不満が続く
- 「何をすれば評価が上がるかわからない」という社員の声が出るとき、評価基準が曖昧すぎて行動と結びついていないことが多いです
- 抽象的な評価項目は、評価者も社員も解釈が分かれやすく、納得感が生まれにくい状態になりがちです
- 評価基準が行動と結びついているかどうかを見ることで、基準の修正が必要かどうかが見えてきます
評価基準への不満は、基準そのものの問題である場合もありますが、基準の「伝え方」や「共有のされ方」に問題があることも少なくありません。評価基準が存在していても、社員が内容を理解していなければ機能しない状態と変わりません。
評価基準の問題は、基準そのものではなく「同じ言葉を違う意味で使っている」という状態から来ていることがよくあります。基準を変える前に、今の基準がどこまで共有されているかを見ることが先になります。
評価制度を見直すとき、見ておきたいこと
- 評価基準がどういう状態にあるか
- 評価者が制度をどう捉えているか
- 次の評価に何を持ち込むか
評価制度を見直そうとするとき、どこを見ておくかによって、次に動く先が変わります。よく見落とされがちな三点をまとめます。
● 評価基準がどういう状態にあるか
- 評価基準が評価者・社員にどのくらい伝わっているか、また実際の行動と結びついているかを見ます
- 制度全体を変えなくても、評価基準の状態を見直すことで改善が始まることがあります
- 評価基準の状態を見ることは、制度の問題か運用の問題かを分ける手がかりにもなります
評価者が同じ基準をどう解釈しているかを見ると、基準の共有が足りているかどうかがわかります。解釈が揃っていなければ、基準の中身を変える前にそちらが先です。
評価基準は、作って終わりではなく定期的に「今の組織の状況に合っているか」を見直すものです。事業の変化や組織の変化に合わせて、基準が変わることは自然なことです。「なんとなく同じ基準を使い続けている」という状態であれば、一度確かめてみることをお勧めします。気がつけば3年前の基準を今も使い続けていた、というケースは珍しくありません。
● 評価者が制度をどう捉えているか
- 評価基準が整っていても、評価者が制度の目的や基準の意味を理解していなければ、評価は安定しません
- 評価者が「どう評価するか」について自信を持って動けているかを見ることが、運用の問題を見極める手がかりになります
- 評価者が制度をどう捉えているかは、何か施策を打つ前に確かめておきたいことです
評価で困っている理由は、人によって違います。評価そのものに苦手意識がある人もいれば、部下との関係の中で話しづらさを感じている人もいます。同じように見える問題でも、中で起きていることは意外と違います。
研修を受けた記録があるかどうかより、実際に評価をどう進めているかを見る方が実態に近づきます。制度上は研修を受けていても、現場では使いこなせていないということは珍しくありません。そこに気づけていない組織では、同じような問題が繰り返されがちです。
● 次の評価に何を持ち込むか
- 評価制度は一度整えて終わりではなく、サイクルが終わるたびに「何が機能したか、何が機能しなかったか」を見ておくことが、少しずつ良くなっていく基本です
- 毎回の評価サイクル後に少しでも何かを見ておくことで、問題が大きくなる前に気づけることがあります
- 評価制度は「作ったもの」ではなく「使い続けながら育てるもの」という感覚で関わることが、長期的な安定につながります
大きな取り組みをしなくても、次の評価に引き継げることはあります。評価が終わったとき「今回気になったこと」を何か残しておくだけで、次のサイクルが少し変わります。評価者からの一言、社員からの反応、面談後の空気感——些細に見えることが、制度の状態を知る手がかりになります。
評価制度への不満が積み重なるのは、多くの場合「問題はわかっているが手が動かない」という状態が続くときです。毎回の評価が終わったとき、何かひとつでも次に持ち込めるものがあれば、それで十分です。問題が大きくなってから一気に動くより、小さな気づきを次のサイクルに持ち込む方が、結果的に長く機能します。
まとめ
- 評価制度への不満があるとき、まず「制度の問題か、運用の問題か」を見ることが先です
- 社員・評価者・制度それぞれがどういう状態にあるかを見ることで、問題の場所が見えてきます
- 見直しは一度で完成するものではなく、評価サイクルごとに何かを見て持ち込むことが長期的な安定につながります
評価制度がうまく機能していないと感じるとき、まず見るべきことは「問題がどこにあるか」です。制度を変える前に、今の評価がどう使われているかを見ることが、最初にやることです。
どこに問題があるかを見ることで、動く先がある程度見えてきます。その上で、気になる部分から動くことが、遠回りをしない方法です。評価制度の見直しは大きく動く必要はなく、「問題の場所を見てから動く」という順序を守るだけで、ずいぶん違ってきます。
「評価制度のどこを見ればいいか」「何から考えればいいか」という段階から、一緒に話せることはあります。
人事制度が機能しなくなる背景について、こちらの記事も参考になります。