2026年4月施行|ストレスチェック対象拡大で何が変わるか

〜50人未満の事業場でも、実施の段取りと説明のズレを減らす整理〜


現場の運用や日々のマネジメントの中で、 「これって今のやり方で大丈夫だっけ?」 と立ち止まる場面は少なくありません。

労務の論点は、制度だけを見ても結論が出ず、 現場の実態(誰が、いつ、どう運用しているか)とあわせて整理することで、 はじめて判断しやすくなることが多いです。

本記事では、ストレスチェック制度の対象拡大について、 管理職・人事・経営それぞれの見え方がズレやすいポイントをふまえつつ、 実務上の整理観点と確認の順番をまとめています。

※個別の事情によって判断は異なるため、 「現場で整理するための考え方」としてご覧ください。

本記事は、官公庁の公表資料で確認できる範囲の「確定している内容」に絞って整理しています。


制度上、何が変わるのか


● 50人未満の事業場でも実施が求められる

これまで、常用労働者数50人未満の事業場では、ストレスチェックは当面の間、努力義務として整理されていましたが、制度の見直しにより、規模の小さい事業場でも実施の対象に含まれる方向で整理が進められています。

小売や飲食の単独店舗、拠点ごとに人数が少ない多店舗展開の企業では、「今までは対象外」という前提が残りやすく、制度変更の情報が現場まで届かないまま運用が続いてしまうことがあります。

社長は「いつから何を整えればよいか」を早めに押さえたい一方、店長や現場責任者は「業務が増えるのでは」という感覚が先に立ちやすいです。まずは制度の方向性と、現場で増える作業の正体を分けて整理すると、説明のズレが減りやすくなります。

● 「実施するだけ」で終わらないのがポイント

ストレスチェックは、質問票の配布・回収だけで終わるものではなく、結果の取り扱い、高ストレス者への面接指導の申し出があった場合の流れ、集団分析や職場環境改善の活用など、一定のプロセスとして整理されています。

本社がある企業では、人事が全拠点分を一括で回収・管理する形にしやすい一方、店舗が分散している企業では「誰が回収し、どこに保管し、誰が何を見られるのか」が曖昧になりやすいです。制度の流れが途中で分断されると、結果的に現場の負担感が増えることもあります。

現場は「実務が回るか」を重視し、人事は「手続きの抜けがないか」を重視しがちです。どちらも大事なので、最初に「実施体制」と「結果の扱い」をセットで設計しておくことが、後から揉めにくくなるポイントになります。

● 小規模ほど「匿名性」と「回答の本音」が論点になりやすい

人数が少ない職場では、集団分析をしても人数が限られるため、結果から個人が推測されやすいのではないか、という不安が出やすくなります。その結果、従業員が本音で回答しにくい状態が起こりやすくなります。

飲食店のシフト制、小売の繁忙期対応のように、負担が特定の時期や特定のポジションに寄りやすい職場では、「忙しい時にだけしんどい」「人間関係の影響が出やすい」など、負荷の質も偏りがちです。制度の目的は未然防止の整理ですが、現場は「評価に使われるのでは」と受け止めることがあります。

経営としてはメンタルヘルス不調の兆しを早めに把握したい一方で、現場は「誰が結果を知るのか」を気にします。情報の範囲と運用ルールを先に決めておかないと、制度そのものへの信頼が作りにくくなります。


現場で迷いやすいポイント


● 「事業場の単位」と「人数の数え方」

ストレスチェックの対象を整理する場面では、「会社全体の人数」ではなく、「事業場としてどう切り分けるか」が論点になりやすいです。多拠点の会社ほど、ここで前提がずれやすくなります。

たとえば、本社10人、店舗A15人、店舗B12人、倉庫8人のような構成では、実施を本社で一本化するのか、拠点ごとに実施するのかで、体制も手続きも変わります。店舗ごとに店長が回収する形にすると現場に負担が寄りやすく、本社一括にすると人事側の設計と管理の負担が増えます。

管理職は「現場の手間」を起点に考え、人事は「法令上の前提」を起点に考えるため、同じ話をしているつもりでも結論が食い違いやすいです。最初に「事業場の単位」「実施体制」「保管場所」をセットで図にして共有しておくと、説明が通りやすくなります。

● 高ストレス者への面接指導を“現場の段取り”に落とす

制度上は、高ストレスと判定された方が面接指導を希望する場合、医師による面接指導につなげる流れが整理されていますが、実務で詰まりやすいのは「誰が、どのタイミングで、どう案内するか」です。

シフト制の職場では、面談時間の確保が難しくなりやすく、本人が申し出をためらうこともあります。一方、本社側は「案内は出した」という事務手続きで完了した認識になりやすく、現場では「具体的にどう動けばいいのか」が残りやすいです。

実際の運用は、職場の体制やルールの作り方によって前提が変わるため、 一律の正解ではなく、個別に整理して判断することが重要になります。

申し出があった場合に、店長が何を確認し、人事が何を手配し、本人に何を伝えるのかを、短い手順書にしておくと、現場の迷いが減りやすくなります。

● 結果の扱いと、現場へのフィードバックの線引き

ストレスチェックは個人情報を含むため、結果の取り扱いは慎重さが求められます。小規模の職場ほど、結果が本人に結びつきやすいと感じられ、回答の抵抗感が出やすくなります。

現場責任者が良かれと思って「最近大丈夫?」と声をかけても、従業員側は「結果を見られたのでは」と感じてしまうことがあります。逆に、現場が何も知らされない形だと、「やっただけで意味がない」という反応が出やすくなります。

どこまでを集団分析として共有し、どこから先は個人情報として守るのか、線引きを言語化しておくことが必要です。経営の見たい情報と、現場が不安に感じるポイントがズレるため、共有範囲を先に決めておくと運用が安定しやすくなります。


いま確認しておきたい実務整理


● まずは「対象」と「実施の型」を決める

準備の入口は、従業員数の把握だけではなく、拠点構成と指揮命令系統を含めた「事業場の整理」です。そのうえで、実施を本社一括にするのか、拠点分散にするのか、実施の型を決めます。

本社一括は統制が取りやすい反面、回収・管理の設計が必要になります。拠点分散は現場の関与が増える反面、情報管理のルールが曖昧だと不信感が出やすくなります。どちらが良いかではなく、自社の体制に合う型を決めることが大切です。

「対象の整理→実施の型→管理ルール」の順に並べると、途中で手戻りが起きにくくなります。

● 外部資源の使い方を決めておく

小規模事業場では、医師による面接指導の受け皿として、地域産業保健センターなどの支援が整理されており、国としても体制の拡充が進められています。自社内で完結させる前提にせず、外部資源の使い方を決めておくと、準備の現実味が上がります。

現場では「誰に頼むのかが分からない」という状態が、いちばん動けなくなる原因になりやすいです。社長・人事側で候補と連絡ルートを先に整理し、店長には「こういう時はこの手順」と渡しておくと、現場の不安が増えにくくなります。

外部の支援先を決める際は、面接指導だけでなく、実施方法の相談窓口があるかも確認しておくと、運用の詰まりを減らしやすくなります。

● 管理職への共有は「説明の型」を用意する

制度変更の情報は、人事と経営では理解していても、現場管理職に届く頃には「要するに何をやればいいの?」になりがちです。管理職が従業員から質問を受けた時に、説明が詰まらない状態を作ることが重要になります。

飲食や小売では、現場での質問は就業時間外に出やすく、短時間で答えなければならない場面も多いです。説明が曖昧だと、余計な不安が広がることがあります。

「目的(未然防止の整理)」「誰が結果を見るか」「面接指導の流れ」の3点を、短いQ&Aにして共有しておくと、現場の説明負担が軽くなりやすいです。


まとめ


ストレスチェック制度は、規模の小さい事業場にも対象が広がる方向で整理が進められています。

実務上は、制度の話を先に固めるよりも、「どの単位で」「誰が」「どう運用するか」を先に決めておく方が、現場の混乱が減りやすくなります。

  • 事業場の単位と対象範囲の整理
  • 実施の型(本社一括/拠点分散)と管理ルール
  • 高ストレス者への面接指導の段取り
  • 管理職が説明に詰まらない共有資料の準備

労務の論点は、制度の正しさだけでなく、 現場で無理なく回る形に落とし込めているかで結果が変わります。 早い段階で運用実態を整理しておくことが、その後の判断と改善をスムーズにします。

【参考情報】
・厚生労働省 公表資料(2025年時点/一次情報)
・関連する通達・解説資料(2025年時点)
・2026年の最新公表資料・更新情報(一次情報の確認)

※本記事は公開時点で厚生労働省等が公表している資料にもとづいて作成しています。 今後の省令・通達・運用解釈の更新により、実務対応が変わる可能性があります。


現場の運用を、このままでよいか整理したい方へ

労務の論点は、制度の正しさだけでなく、現場の運用と噛み合っているかで結果が変わります。

「誰が、いつ、どのルールで判断しているか」を一度棚卸しすると、 管理職・人事・経営のすれ違いが減り、判断も揃えやすくなります。

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